運送業にかかわる法律

 運送業には様々な法律がかかわってきます。
 運送業は、公共性が強い業種です。
 利用者の利益や公共の福祉を守るために様々な法律による規制があります。
 いわゆる物流2法と言われる、「①貨物自動車運送事業法」と「②貨物運送取扱事業法」だけでは収まりません。
 ここでは、運送業にかかわる法律を簡単にご紹介します。

運送業に直接かかわる法律

物流2法

  ①貨物自動車運送事業法
  物流2法の一つで、運送業のメインとなる法律です。
  平成元年に制定され、それまで免許制だった運送業が許可制になりました。
  物流業界の規制緩和のために施行された法律で、この法律の施行により「参入障壁を撤廃し、
 新規 参入の促進」「運賃設定の自由化」「積み合せ運送の自由化」が実現しました。
  事実、1990年には約37,000社だった運送事業者数は、2018年には約57,000社にまで増加し
 ています。
  平成15年の改正において、区域制が廃止され、運送会社は多様な形態をとるようにな
 りました。
  また、一般の貨物自動車運送利用事業はこの法に組み込まれました。

 貨物運送取扱事業法
  利用運送事業と運送取次業を規定していましたが、平成15年の改正で、「貨物利用運送事業法」と
 改題し運送取次は廃止されました。

人に関する法律

 道路交通法
 我々にとって最も身近な法律の一つです。「道交法」などと言われています。
  運転免許を取得する時に勉強するので知っている人も多いと思います。

 
「第一条(目的) この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。」

 第一条にあるように、この法律は、歩行者や通行車両の危険を防止し、安心して歩いたり車を運転できるようにするためのものです。道路上の事故を未然に防いだり、車がスムーズに運転できるように様々な決まりがあります。
 ちなみに、道路に関する設備を規定しているのは道路交通法ではなく、「道路法」です。

 道路運送法
  バスやタクシーなど旅客運送に関する法律です。
  旅客運送とは他人の需要に応じて、自動車を使い有償で人を移動させることです。
  ここでは、言及しません。

車両に関する法律

・道路運送車両法
 路上を走行する車両(自動車、二輪車など)の所有権が誰にあるのかを行政が公に証明したり、
車検などを規定している法律です。

道路に関する法律

道路法
 昭和27年に制定され、道路の種類(高速道路、国道、都道府県道、市町村道などの区別)や道路の保全、構造、費用、罰則などを規定しています。

運送業と密接にかかわる法律

土地と建物にかかわる法律

・都市計画法
 無秩序は都市開発などを抑制し、バランスよく土地が利用されるようにその土地の使用の目的などを制限する法律です。
 大まかにいうと、先ず、開発が行われる市街化区域と開発を抑制する市街化調整区域に分けられます。市街化区域は用途地域に分けられ、それぞれ建てられる施設などが決まっています。
 営業所を決めるときまず調査する必要があるのがこの用途地域です。

・農地法
 一定の食料自給率を確保するために、農地を保護することを目的とした法律です。
 特に大事なのが、3条・4条・5条の3つです。
 3条は、農地を農業の営むために売買や賃貸する場合を規定します。
 4条は、所有者が農地転用をして使用する場合を規定します。
 5条は、取得者が農地転用をして農地以外として使用する場合を規定します。

労務にかかわる法律

 労働基準法
 トラックドライバーの労働時間は他の業種の平均に比べて長いといわれています。
 問題となるのはその時間外労働時間です。
 大企業では2019年から、中小企業では2020年から時間外労働時間の上限規制が施行されています。
 運送業は、2019年から5年間、上限規制の適用が猶予されています。
 
 運送業では、2024年4月1日より、上限規制が適用されることになります。
 上限規制が適用されると、トラックドライバーの時間外労働の上限が年960時間となります(特別条項付き36協定を締結する場合)。
 なお、「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」とする規定は適用されません。
 これを運送業界では、「2024年問題」と呼んでいます。
 ドライバーからの残業代訴訟が頻発するなどと言われています。
 運送会社は早めのご対応を。

時間外労働時間の上限規制の概要
□年720時間以内

□複数月平均80時間以内(休日労働含む)
 「2ヵ月」「3ヵ月」「4ヵ月」「5ヵ月」「6ヵ月」

□月100時間以内(休日労働含む)
 
※上記に違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。