運輸安全マネジメント制度とは?
運輸安全マネジメントとは、輸送の安全性を向上させるためにどのように事業を運営していくか、輸送の安全を確保する体制をつくるため、経営トップと現場が一丸となり、安全確保の体制作りに取り組むことです。
そして、その安全確保の体制への取り組みを国が評価をしさらに助言をします。
①運送事業者一丸となって安全体制確保の取り組みをPDCAサイクルに当てはめ回し、②それに対する国評価・助言することが、運輸安全マネジメントの特徴です。
運輸安全マネジメント制度は、運送事業の根幹である運送のヒューマンエラーによる事故・トラブルを減らし、運送利用者である国民の信頼に応え得る運送事業を成し遂げるべく、平成18年に導入されました。
運輸安全マネジメントのガイドライン14項目
運輸安全マネジメントのガイドラインには、以下の14の項目が定められています。 ①経営トップの責任 ②安全方針 ③安全重点施策 ④安全統括管理者の責務 ⑤要員の責任・権限 ⑥情報伝達及びコミュニケーションの確保 ⑦事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用 ⑧重大な事故等への対応 ⑨法令関係等の順守の確保 ⑩安全管理体制の構築・改善に必要な教育・訓練等 ⑪内部監査 ⑫マネジメントレビューと継続的改善 ⑬文書の作成及び管理 ⑭記録の作成及び維持
①経営トップの責任
運送事業の安全に対する責任は最終的には経営トップにあります。
すべての安全体制の構築に経営トップが取り組むのは無理がありますが、その体制をつくるための予算や人員の確保、組織作りなど、経営トップが安全体制確保に取り組むという姿勢を示しましょう。
②安全方針
どの運送事業者も、安全方針を掲げていることとは思いますが、従業員全員にそれが周知されていなければ意味がありません。
朝礼などで定期的に周知させたり、社訓として従業員の目につくところに張り出したりすることが大事です。
また、最低でも①関係法令の遵守、②安全優先の原則、③安全管理体制の継続定期改善を盛り込みましょう。
③安全重点施策
安全重点施策は、短期的な目標と中長期的な目標を定めましょう。
目標は後にきちんと評価ができるように、曖昧なものではなく数値化したものを策定しましょう。
例えば、「運転者のゴールド免許10名」「事故0件」など具体的に策定しましょう。
また、目標は現状を把握し実現可能なものにしましょう。
目標を達成したという満足感が、さらなる目標達成のモチベーションに繋がります。
④安全統括管理者の責務
安全統括管理者は現場におけるPDCAサイクルを回す役割を担います。
また、安全を確保するために経営トップに報告と提案をします。
いわば、経営トップと現場の橋渡し的な役割を果たします。
そのため、経営トップは安全統括管理者に責任と権限を与えることが、 業務遂行のためには重要になります。
⑤要員の責任・権限
輸送の安全を確保するためには、運送事業者が一丸となって取り組むことが重要です。
そのためには、経営トップ、安全統括管理者だけではなく、関係者の責任と権限を明確に定め、安全管理規定などに盛り込み、それを内部に周知しましょう。
⑥情報伝達及びコミュニケーションの確保
運輸安全マネジメントが上手く機能するかどうかは、どれだけ組織が一丸となって取り組むことができるかにかかっています。
そのためには、組織内での情報や意識の共有が重要になります。
しかし、現場の従業員が経営トップに意見などをいうのはなかなか難しいところもあります。
そこで、①経営トップと現場を繋ぐ安全統括管理者が現場に足蹴く通いコミュニケーションをとる、②無記名でOKな意見箱などを設置して忖度のない意見を貰い、経営トップはきちんとそれに返信をするなど風通しのいい組織作りを目指しましょう。
⑦事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用
運行管理者が常務終了後の点呼などで、聞き取ったヒヤリハット報告を収集することはどの運送会社でもあります。
しかし、それを分類・整理し、さらに原因の分析・その後の対策まで行っている会社は案外少ないのではないでしょうか?
本を買って積読しているだけでは、知識を得られないように、ヒヤリハット報告も集めるだけでは何の役にも立ちません。
また、ヒヤリハット報告は事故再発防止のためのヒントの宝庫です。
これを活用しない手はありません。
⑧重大な事故等への対応
重大な事故や災害発生時、落ち着いて対応できる人はそう多くはないでしょう。
その様な有事には、対応マニュアルを作成しておくと、その被害を少しでも抑えることができます。
具体的には、①事故時、災害発生時にすべきことの優先順位、②連絡すべき場所と内容などを盛り込んでおきます。
また、⑩に関係することですが、マニュアルだけではなく、年に1回は、シミュレーションや訓練を行うなど、日頃から準備をしておきましょう。
⑨法令関係等の順守の確保
運送業は、本来禁止されているものを許可をとって営んでいくものです。
運送業は公共性の強い事業なので罰則が厳しく、ちょっとした違法行為が、業務停止にまで至ることもあります。
運送事業に関する法律は、運送業にかかわる法律、車両に関する法律、道路に関する法律、労務に関する法律、危険物に関する法律など非常に多岐にわたります。
そしてこれらの法律に関して、行政庁からの多くの通達があります。
法律は社会の変化に合わせて、アップデートされていきます。
昨日まで、合法だったものが今日は違法になることも少なくありません。
運送事業者は常に関係省庁や業界団体から情報を集めて、それを従業員に周知するよう努力する必要があります。
⑩安全管理体制の構築・改善に必要な教育・訓練等
安全管理体制の構築は、1日2日で出来るものではありません。
そのためには、常に安全確保のための教育・訓練が必要になります。
この教育・訓練は、現場だけではなく安全統括管理者などや経営トップにも実施する必要があります。
また、その際には、外部の専門機関などを有効に活用しましょう。
また、教育・訓練を実施したら、その成果をチェックすることも必要です。
⑪内部監査
年1回、経営トップを含めて社内全体の安全マネジメントへの取り組みを、内部的にチェックしましょう。
内部チェックが有効に機能するように、監査するものにある程度の独立性を担保しなければなりません。
ただ、内部監査といえど社内の人間でなければならないということはなく、外部の専門家に委託するのも一つの方法です。
また、内部監査は問題点の指摘だけではなく、他の部署などの手本にもなり得る良い点も積極的に集め、それを全社で共有できるようにすることが重要です。
⑫マネジメントレビューと継続的改善
少なくとも年に1回は、安全管理体制の構築・改善を振り返り、経営トップがそれを評価し、問題点があればその改善案を提案します。
ここで、③で目標が数値で具体化されていれば、その評価がしやすく、また、経営トップの恣意に流されることもありません。
また、現在明らかになった課題是正措置だけではなく、将来発生しうる課題に対しても、その予防措置を考えることが望ましいです。
⑬文書の作成及び管理
④~⑩での課題に対する対応をきちんと文書にして管理しましょう。
重大事故に対する対策やヒヤリ・ハット情報などは、口頭で対策を述べて、もその場にいなかったものには届きませんし、当事者が退職などした場合、その情報は失われてしまいます。
きちんとした文書にしておけば、後年、それを訓練や教育に活用できます。 この文書は会社の大切な財産になります。
⑭記録の作成及び維持
運送業務では、事故の記録、教育訓練の記録、内部監査の記録、マネジメントレビューの記録など実に様々な記録があります。
これらの記録を適宜チェックすることは、安全管理体制が正しく機能しているかどうかの指標となります。
ただし、上記のように多くの記録があるので、何もかも記録するのではなく、何が必要な記録(もちろん法定の物は記録します)なのかを考えてから記録しましょう。
運輸安全マネジメントに興味のある運送事業者さまは、当事務所にご相談ください!